「畑が!」
ミオが悲鳴を上げて、慌てて畑の方へ行こうとするのを老人が腕を引いて止める。
「奥方危ねえ!ここにいろ!」
「でも畑が!」
「ミオ、危ないから隠れてろ!」
尚も畑に向かおうとするミオの前に今度は青い毛並みを風に靡かせてアルマがやって来た。
「レイとグランツが相手に向かってる。今の内に早く洞窟の中に逃げるよ」
どうやらアルマがミオ達を安全な場所まで避難させてくれるらしい。
「ミオ、今は畑より命が大事だよ」
「……はい」
アルマの諭すような声に渋々とミオが頷く。
砲撃は今もまだ続いている。流石は大国の戦艦だ。まるで雨のような勢いであちこちで爆発が起きている。
当然ミオの作ったジャガイモ畑だって例外ではない。
「……っ!」
悔しそうにミオは唇を噛み締める。
あんなに丹精込めて作ったジャガイモ畑は砲弾の衝撃であちこち穴が空き、見るも無惨な姿になっていた。
「酷い……!」
耐え切れずにミオが思わずそう漏らしてしまう。
その時だ。
「エクス……カリバー!」
島の船着場からレイの渾身の光の一撃が放たれた。
ミオの怒りや嘆きを代弁したかのようなその一撃は戦艦を一度に複数沈める。
「砲撃が止んだ!走れ!」
アルマに促され、ミオ達は全速力で走る。
しかし、そんな彼らを嘲笑うかのように洞窟都市の鉄門手前で砲撃の一つがミオの達の頭上目掛けて飛んできた。
「やべっ!」
アルマが珍しく顔色を変える。このままでは爆発に巻き込まれてしまう。
しかし砲撃による爆発はミオ達に落ちる前に突如空中に淡い青色の魔法防壁によって防がれた。
「グリモワール!」
アルマが安心した笑みを浮かべて、いつの間にか鉄門から出てきていたグリモワールを見つめる。
「皆さん、レイの屋敷へ避難してください。敵兵の侵入は我々で食い止めるつもりですが、敵が潜入していないとも限りません。ミオさん皆を頼みましたよ」
「……はい!」
流石はグリモワールである。ミオの教師である彼は、砲撃の様子と彼女の青ざめた表情で大切なジャガイモ畑に異変があったと悟ったのである。そして「皆を頼んだ」とそう言えば、ミオが気持ちを切り替えて勇者の嫁としての役割を真っ当してくれると知っていた。
グリモワールの思惑通りミオは意気消沈していた顔付きをキリリと引き締める。
「皆さん、行きましょう!」
そう言っ